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2025-10-28 08:11:00
今朝は嫌なものを見た。新聞1面に掲載された、トランプと天皇の写真である。なんだこれは。終戦時のマッカーサーと天皇が並んだ「有名」な写真がすぐに連想される。どうせこういう写真は長く残って、よく引用されることになるんだろうが、せめて朝日の写真でなく、道新の写真の方が「柔らかくて」よい。/まるで保護者とその息子が並んでいる図ではないか。宗主国の君主である米国大統領がその保護国である日本の王と並んで映っている。はやくやめたいな、日米安保条約。
2025-10-28 06:24:00
ウクライナ戦争を考えるとき、この戦争の構図「西欧世界対ロシア」について、トッド氏は社会人類学的知見に立って、まず偏見なく両者の「構造」を眺めることが最初に必要だろうと考える。そして我々「西欧側」の人間は「ロシアの現にあるがままの構造」をまったく度外視しているようだとする。/ロシア国民の背景とするロシアの家族型について、たとえばフランス(平等主義的性質の核家族)と比較して、これはユーラシァ中央に広範な「共同体家族」だとして、つぎのようにいう。「ロシアの共同体家族は、普遍主義的な『平等』のシークエンスを発動する。『息子たちは平等である』に由来して、『人々は平等である』および『諸国民は平等である』」 /フランスが『子供たちは平等である』に由来して、『人類は平等である』という普遍主義を発揮し、フランス革命を世界に広げようとしたように、ロシアは共産主義体制を普遍的なものとして国際社会に広めようとした。この全体主義的共産主義体制が解消された後、ロシアの独裁的プーチン帝国は、「諸国民は当然平等であるはずだ」というより平和主義的ビジョンに変化した。そこで「多極的世界の構想を繰り広げ、その多極的世界の中でロシアは諸国民の平等性と自立性を擁護せねばならない」(ロシアの主張)という「西欧の国際的普遍性の主張」に対する「ロシアの普遍的主張」として、現実には非西欧世界(中国、インド、アラブ諸国等)に支持されている、とトッド氏は国際政治の現実をみる。これはロシアが国際的に孤立して破れているという図とは、だいぶ違うのではなかろうか。人口で言って、西欧世界25%、非西欧世界75%である。/確かにユーラシア中心部の共同体家族型は、国民性として『集団主義的・専制的』である。今核家族的な英米仏の「個人主義」が極端に絶対的に唱えられるのに対して、この「集団主義・専制主義」が対極としてくっきりと目立ってきた次第だ。その代表がロシアである。それにしてもこの非西欧の75%がまったく眼中にない西欧的世界観が、おそろしく非現実的なのは、否めないであろう。
2025-10-27 18:18:00
10/27 FNNプライムオンライン 木村太郎氏執筆 配信 「ニューヨークに『社会主義者』、「イスラム教徒」の市長は誕生するか 全米が見つめる"マブダニ"現象」。ご一読あれ。/11月4日投票のニューヨーク市長選で、民主党の候補者で、「現実的社会主義者」を名乗るソーラン・マブダニ氏(33歳)が圧倒的に優勢だそうだ。だいぶ遅れて2位に元ニューヨーク州知事、クオモ氏、ずっと遅れた3位が共和党候補だそうだ。CNN調査によれば、民主党支持の66%が「社会主義に好意的」だそうで、マブダニ氏が当選すれば全米最初の「社会主義大都市市長」との由。ちなみに間大戦期の民主党ルーズベルト大統領は、はじめニューヨーク市長であった由。トランプは「これはもう負かすことができない」と称して、早々とニューヨーク市に対する連邦予算180億ドルを削るという暴挙を行った由。このマブダニという人は、アフリカ生まれ、両親はインド系のイスラム教徒で、非常に多数の市民がマブダニ応援のため登録したという。この人の現実的社会主義というのは、いってみれば「社会民主主義」。資本主義を否定はしないが、「公平な分担を求める」という政見だという。マブダニ市長が決まると米国のいくつかの大都市に飛び火するだろうし、米国民主党が「社会民主主義政党」となって、トランプ後の米国政治を一変させるかもしれない。
2025-10-27 06:08:00
『トッド人類史入門』第2章「ウクライナ戦争と西洋の没落」。第2回の話題「ウクライナ戦争での対立図」。//トッド氏はこの話題で、現在の日本人の多くが信じている「ウクライナ人という『正義の善』にロシア人という『悪の権化』が侵略戦争を行っている」という『イメージ』とは『一変』した『イメージ』を述べている。どうぞ前回に引き続く今回、さらに次回、をお読みの上、お考えあれ。そもそもあなたの目は、米英とEU諸国という『一丸となった正義の味方』が『ウクライナを侵略しているロシアという悪の権化』を『退治している』というイメージではないだろうか。そうすると同じ『一枚岩の正義の味方たち』が、現在行われているイスラエルのパレスチナ側ガザ侵略に対してはなにやら得体のしれない行動を示すのはどうしてだろう。米国の大統領がロシアのプーチン氏を尊重するような態度を示したり、ウクライナ大統領を叱責したり、イスラエル寄りの態度を示したりするのはどういうわけだう。欧州の英、仏、独が、言動が一致しないのはなぜだろう。こうしてみると単純にウクライナ応援ということで『国論が一致している』のは、極言すればいまでは日本だけではないか。もっとも最近は日本国内でウクライナ問題を口にすることすら、おややけには稀のようだが。でもウクライナ戦争そのものは容赦なく続いているのである。/ただ、『日本の国論はウクライナ戦争について一致している』が、現実の国際政治の上では、日本は現在三種類の、『相互には矛盾する政策』を『日本国としては当然』としてとっているのである。ダブル・スタンダードならぬトリプル・スタンダードだ。『まあ国際政治についてはいつもの苦渋の選択だから』と日本人はこれは異とはしない。だが外国はこれを咎めてくるだろう。その時はまた、『しかるべくあいさつする』というわけだ。日本の国論というのはたいがいこういう具合なので、日本人はさして気にしない。/佐藤 優氏は、高坂正堯氏の『国際関係三層の態度』を援用して、日本がウクライナ戦争に対して、三層の態度をとっているとする。第一層は「価値の体系」で、公式にはウクライナ擁護という政治的立場を明瞭にしている。しかし第二層の「利益の体系」では「日本の国益上やむにやまれぬ措置」として、「日本はG7の中で唯一ロシアの航空機に対して自国の領空を解放している。またシベリアの上空を経由してヨーロッパに行くことに利益を見出している。旅客機は飛んでいないが貨物機を飛ばせている。」「ロシア極東の石油と天然ガス採掘プロジェクトであるサハリン1とサハリン2の権益を日本は維持している。」「ロシアに入漁料を支払ってサケ・マスを獲る仕組みも維持されている。」第三層は「力の体系・すなわち軍事力の体系」で、日本に平和憲法がある以上、ウクライナ軍事支援はできないと。端的には「防衛装備移転三原則が紛争当事国への武器輸出を禁止しているので、ウクライナに防弾チョッキやヘルメット以外の兵器は送っていない。」(52-54頁)/文を改める。
2025-10-26 08:41:00
『トッド人類学入門』Ⅱ「ウクライナ戦争と西洋の没落」を、私は、4つの話題を主題にして、ご紹介しよう。今回はその1「英米覇権のゆらぎ」だ。この第2章は、トッド、片山杜秀、佐藤 優という3氏の対談として掲載されている。/現代世界の混迷の由来は、民主主義が試練を迎え、西欧(とくに米英)による覇権が揺らいでいることにある。そもそも米英の覇権は、米英の「核家族」を背景に生まれたが、この「核家族」は「最も原始的な家族構造」でありながら、「最も先進的な社会(近代民主主義社会)」を築いたという、奇妙なパラドクスを行った。近代民主主義は、個人主義を出発点とし、個人が生まれながらに自由という権利をもつ、お互いに平等な社会である、という「人類普遍の真理」とされるわけだが、国民的家族型を背景にした歴史的現実から見れば、個人主義が明瞭なのは英国(と米国)だけ、フランスがそれに準ずるのである。「核家族」という背景が重要である。英国(と米国)は「平等」の確保が甘い。フランスの方は「平等」の確保が強い。以上を要するに、英米仏にとっては近代民主主義が「普遍」と受け取れる歴史的事情があるが、「直系家族」型を背景とするドイツと日本は、やはり近代民主主義という政治思想を受け入れはしたが、なにがしか忸怩たるものが残るのである。西欧社会は世界人口の25%程度を占めるが、残余の75%の世界は家族型では「それ以外の様々な共同体」型であり、近代民主主義には一層なじみにくい。「アラブを爆撃して、フェミニズムという人類普遍の習俗を受け入れさせようとする」なそが、「暴挙」なのは、いうまでもない。ただ西欧が、それが暴挙であることに気が付かないほど、自らを普遍と信じているのである。それに、経済的平等を欠いたありようを人に強要したり、富の所有における超自由主義を人類普遍の自由と信じたり、普遍的民主主義からみてすら妙な社会を作ってそれで異としないなぞ、すでに民主主義の自己矛盾ではなかろうか。今日、個人主義は、原点に戻って、重大な反省を必要とするだろう。そもそもなんらかの集団なくしては個人も個人ではありえないではないか。たとえ利己的なホモ・エコノミクスでも、その行動を規定するものとして、家族、宗教、国家があるのではないか。今後自由度が格段に高い仮想通貨が現実になるとしても、これを社会の安寧のために強力に規制する公権力を確立せねば、悔やんでも悔やみ足りないことになろう。