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2016-10-09 16:58:00
大前研一氏、ロシア・ショック(5) ロシアには石油、ガス、電力、鉄鋼、金属、機械製造、通信などの分野に、国家的規模の大企業が存在していて、国際的にみてもその能力は侮れない。外国の大企業がロシアに入っても、単純にこれらの大企業を制圧できるというようなものではない。(その反対にこれらの企業が海外企業を買収しているぐらいだ。) 日本の大企業がロシアに入って資本的に圧倒してゆくというのとはちょっと意味が違う。これらのロシア大企業は「自分の庭」で活躍しているだけに、外国企業が単純に牛耳れるものでもない。★ただ、大前さんは、ロシア企業が、どうも経営とか運営とかいうことが得意ではないとみている。ロシア人一般もそうである。私は思うが、この点でロシアは、オーストラリアに似ているのではないか。オーストラリアも資源大国で、海外の投資を多くオーストラリアにひきつけているが、どういうものかオーストラリア人は自国の資源を用いた工業となるとからきし下手である。かといってロシア人もオーストラリア人も、決して知的能力が劣っているのではない。数学とか自然科学とかIТ技術とか、こういう能力のある人材は多い。★私は思うが、ロシア人とオーストラリア人に乏しい経営能力や管理能力では、日本人は逆に得意としている。パートナーとして組むと相性がいいと思う。★ロシア企業の動向は、大前著、第4章の3.「ロシア企業の巨大パワー」などを参照されたい。
2016-10-09 00:24:00
大前研一氏、ロシア・ショック(4) 「ロシア進出の十大心得」 これは大前研一『ロシア、ショック』(129-133ページ)に載っている「ロシアビジネス成功10原則」で、これ自身孫引きなのだが、これまでロシアに進出したことのある北海道の中小企業の経営者には、身に染みて「真理」とわかる話である。★1 「ロシア人と共にロシアの為に働くという心で働け」★2 「ロシアの流儀を尊重しつつも、自分の流儀を決して忘れないこと」 ★3 「政府や各種行政機関との関係を構築し、現地の人脈造りに励むこと」 ★4 「ビジネスの核心に対しては断固たる態度で、ビジネスの枝葉末節には柔軟に対応すること」 ★5 「窮地に活路を見出す術を見出せ。要するに、簡単にあきらめるな。」 ★6 「腐敗はビジネス生活の一部と考え、それにうまく対処する術を身に着けること」 ★7 「ロシア人は権威主義を嫌うから、決して権威主義的にふるまわず、しかし本物のリーダーシップを発揮すること」 ★8 「現地への権限移譲は単純には成功しない・段階的に実施するがよい」 ★9 「現地でいろいろすり寄ってくる者が現れても、うちのやりかたはひとつ、うちの窓口はひとつ、という原則を貫くこと」 ★10 「現地政治・経済体制の朝令暮改に、絶えず備え、早め早めに対処すること」
☆北海道は比較的に以前から企業の、ロシアとの経済交流があったが、うまくいったという話はほとんど聞かず、ひどい目にあったという話ばかりよく聞く。しかし進出した企業に体質的に非常な甘さがあるのも、間違いのない事実である。大企業でうまくいっているのは、資本が大きいだけではない、渋い体質を持っているからでもある。
2016-10-08 23:54:00
大前研一氏、ロシア・ショック(3) 現在の日ロ交渉や、その将来を考える場合、双方の指導者の今後の「在世期間」の考慮は、忘れてはならない。★ロシア大統領プーチン氏の場合、この人物は2000年から2008年まで2期間大統領を務めた後、大統領職をメトヴェージェフ氏に渡し、自分はその下でロシア首相を務めた。しかしその間も実権は明らかにプーチン氏のほうにあり、メトヴェージェフ氏のほうがそれを支えている感があった。プーチン氏は2012年に大統領に復帰し、2020年までは間違いなく続くだろうとみられている。恐るべきロングランの政治家だ。★他方我が国の安倍首相は、2012年から首相になって、その自民党総裁任期は2018年までだが、今の政局ではいずれそれを延長して2020年まで、すなわち東京オリンピックの年まで在職するのではないかと見られている。これまた立派な長さだ。★現在の欧米諸国の政治の不安定さを見ると、現職で同じ人物が2020年まで職を失わない人物があるかどうか、たいへん疑問である。現在選挙戦中の米国を除くと、G8級の政治家で2020年まで続くのはプーチン氏と安倍氏だけかもしれない。このことは両者の行う外交交渉に非常な安定性をもたらすだろう。今後とも必要とあれば何度でも外交交渉を続けられるからである。★日ロ交渉については、外交交渉が首相官邸と経産省主導で進み、外務省が脇役になっているという日本の今の姿も、そのことだけで言えば大変に不規則だが、外務省も致し方なしとせざるを得ないのではないか。★大前研一『ロシア、ショック』第1章 の「4・2020年まで続くプーチンのロシア」に、プーチン評が書かれている。よく2008年にここまで予見したね。
2016-10-08 19:50:00
日ロ関係の21世紀(13) 「対ロ経済協力1兆円超 政府案・極東3港湾など41件」という見出しの記事が『北海道新聞』2016年10月8日号1ページと3ページに載っていた。それに基づいて記事の要点を記す。★今年5月に安倍首相がロシア・ソチで行われたプーチン大統領との会談で始めて示した「8項目の対ロ経済協力」(医療、都市づくり、中小企業交流、エネルギー開発、生産性向上、極東の産業振興、先端技術、人的交流の8項目)。その後の経過も経て、現在はどのようにまとめられているのかというあらましがこの記事に載っている。★この「対ロ経済協力プラン」というのは、いろいろ並んではいるが、どれがどう具体的なものとして、それぞれがどの程度の比重を持って、把握できるかがこれまで大変にあいまいであった。この記事によってそういう比重がつかみやすくなった。★私は記事を読んで考えた。この「1兆円」という金額が人の目を引くが、「ウラジオ近郊の約6千億円規模に及ぶ石油化学プラントの建設」という金額が突出していて、それに「サハリンやシベリア、北極海沿岸における石油・天然ガスの共同開発促進」とあるのをプラスして考えれば、なんといっても「エネルギー開発」という項目が突出していて「1兆円」の3分の2にも及ぶであろう。日ロ大企業が行う案件である。「ウラジオストク、ザルビノ、ポストチヌイの極東3港湾の機能強化」、「ハバロフスク国際空港の整備や運営への参画」は、明らかに日ロ大企業間経済協力の前提となる極東における「インフラ整備」である。「国家的協力」の比重が強く、「国民的協力」の比重は弱い。★もっとも小室直樹さんによると、領土問題は国家的問題であって国民的問題ではないのだそうだ。だから国家的な「領土問題」にかかわるのが「国家的協力」なのかもしれない。
2016-10-07 23:20:00
大前研一氏、ロシア・ショック(2) 大前研一『ロシア・ショック』講談社、2008年 目次
★序章 激変する世界の潮流 ★第1部 変貌するロシア 第1章 プーチンの奇跡 1.どん底から急転したロシア経済 2.ロシア経済を変えたフラットタックス 3.プーチン人気の秘密 4.2020年まで続く「プーチンのロシア」★第2章 拡大する市場 1.ロシアの3つの資源 2.市場としてのロシア 第2部 ロシアン・ビジネス・チャンス 第3章 愛される日本、出遅れる日本 1.無条件に日本が好きなロシア人 2.ロシア進出最新事情 ★第4章 21世紀のIТ大国・ロシア 1.世界のハイテク企業はロシアを目指す 2.勃興するロシアのIТ企業 3.ロシア企業の巨大なパワー ★第3部 世界の潮流とロシア 第5章 内政・外交の光と影 1.悶える中国、突き抜けたロシア 2.ロシアの抱える外交課題 ★第6章 ロシアとEU 1.ロシアがEUに入る日 2.EUショック 終章 日ロ関係の未来図
★この本の全体は、北方領土問題などにこだわりすぎないで、日本は早くロシアと平和条約を結んで2国間の通常の国交を開き、発展性のある経済を抱えているこの国と、もっと積極的に交際すべきだというのである。今日の安倍首相の日ロ交渉態度と「矛盾していない」と私は判断している。いまの日ロ交渉は国民にはまるで「判じ物」を読むような分かりにくさであり、それというのも情報開示もねんごろな説明もなにも、まったくなされていないからである。もっかの日ロ交渉の目玉が日ロ大企業の提携に集中することの現実性も、大前著を一読すればすぐわかる。なに大前氏も、経済交渉はもっぱら日ロ大企業間の交渉としてしか描いていない。こういう交渉は当然にロシア全土をにらんでのもので、極東ロシアに限った議論ではありえない。日本側ももちろん日本全体を想定している。ただ、領土としては、また物理的関係としては、極東ロシアとわが北海道が隣り合っている、というだけのことである。★大前氏がこの本でEUとロシアの関係を論じている下りは、現在の国際政治関係をみればいまの大前氏ならこれとは違う語りようをするだろうという気がする。しかし、それはそれとして、面白く、念頭に置いてよい視角だと思う。★そもそも極東ロシアというのは、ロシア国内全体からみれば大変な僻地で、人口密度が徹底的に低い地域なのだ。★そして極東ロシアの人口密度は、ソ連時代と比べてすら低下している。旧ソ連邦は3億の人口があったが、今日のロシア共和国はその半分の人口しかない。そして過去十数年の激動のなかで、ロシア共和国の人口は減ってきている。国外に脱出した人口がかなりに上った。ただ、大前氏は、このロシアに、大きな将来性ありという評価を与えるのである。そう評価する理由はこの本に書いてある。