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2016-06-25 12:51:00
6月23日の国民投票で英国のEU離脱という方向が決定した。さてこれからの英国はどうなる? ブログは日本では、「大変だ」「困った」という大合唱になった。大概の日本のメディアが意見を述べている。 私はそれを読んでがっかり。ひとつだけまともなのは、浜 矩子氏の冷静なコメントである。島国にして海洋国である英国は、しょせん大陸のEUとは肌が合わない、と。 もともとEUが理想的な「ヨーロッパ合衆国」なのではない。この現実的観点が日本のブログ諸氏にはすっかり抜け落ちている。 さてEU脱退と決した英国の国民は、何をどう考えるか。ここはひとつ英国国民の目になり代わって「絵」を描いてみれば、ある種の構想がどの英国民にも浮かび上がってくるだろう。そのようなナショナル・プランとその支え手が登場してくるのは時間の問題である。(いや、もうあるんじゃないの?)いわば新大英帝国構想である。 思ってもご覧。国民投票を終えた英国民の目の前にあるのは、もうEUなどではない。かつてナチスドイツの広域経済圏が内容となっていた欧州大陸ではないか。もう150年さかのぼると、ナポレオンが統一して「英国上陸」をうかがっていた欧州大陸であろう。つまり、敵国EUである。 第2次大戦後を考えても、EEC(EUの歴史的母体)がベネルクス3国、独仏伊の6か国で誕生し、ヨーロッパ共同市場を作った時も、英国はこの動きに対立的に動き、EFТAという同盟を主導した。 今日の英国をもたらしたのは、1980年代以来のグローバリズムと経済金融化の流れにすっかり乗ったことによる。投資自由化によって招いた大量の外国企業(その中に1000社余の日本企業もあり、これらの企業は英国からEUに輸出できることを大きなメリットとしていた)。ロンドンのシティ金融街に外国の金融業者を大量に入れて、それいぜんからあった「ユーロ金融市場」(このユーロは、EU通貨という意味ではない)の発展に上乗せして、世界にもまれなる金融的経済を作り上げたこと。 それがいま、このような金融的経済と外国企業のEUへの輸出だけが幅を利かせる現在の英国経済は、英国地方の元来の英国国民の生活利益をさっぱり重んじていないという不満が、今回の国民投票で爆発したわけである。 さあ、EUから自由になった英国は、どう生きるのか。 構想というものは、あまり詳しく出すと、かえって現実性を失う。内部に多少の矛盾を抱えることを覚悟のうえで、おおざっぱに言うに限る。 私が英国民なら、「7つの海構想」を出しますよ。 もともと英国は海洋国で、海を通してひとたびは世界を征服した。 「7つの海」とは、中世の呼称で、今日であれば、大西洋(南北)、太平洋(南北)、インド洋、北極海、南極海を現代版7つの海というそうです。この7つの海で英国が活躍する国策を建てようというのです。 もちろん今日の英国には、かつて存在した無敵艦隊はない。またかって存在した「産業革命に支えられた世界の工場」はない。ないものはしかたがない、新たに「頭の力」で、その多くは外交力で、補うしかなかろう。 およそ英国がこれまで常に分裂の危機にさらされていたのは周知のところで、スコットランドの女王が英国の王位をうかがったり、イングランド軍とスコットランド軍が激突したり(このときスコットランド軍の英雄を映画ではカーク・ダグラスが演じていましたな、映画の題名は忘れたが)したであろう。その都度イングランドが新たな発展の展望を切り開いていた中で、そのような離反をイングランドは止めえたのではなかったのか。私のいわんとするのは、発展構想と発展の現実がある中で離反に対応する工夫もありうるので、イングランドになんの構想もなければ久しい昔に英国は分散化していましたよ。 海ごとに数えてゆこう。 1. 北極海構想。英国から東へ、「北海」--北欧諸国、「北極海」--ロシア、その出口の日本。以上が北極圏航路ですね。ここで「北太平洋」--中国、フィリピン、その他アセアン諸国。あるいは、「北大西洋」--カナダ、米国。 2. 地中海構想。英国から南東へ、「地中海」--イタリア、ユーゴ、ギリシャ、「黒海」--トルコ、中東諸国、ロシア。 ここから「スエズ運河」--エジプト、北アフリカ諸国、「紅海」--中近東諸国、「インド洋」--インド、東南アジア、中国。 3. 南極海構想。英国から南へ、オーストラリア、ニュージーランドの南、チリ、アルゼンチンの南。 4. 大西洋構想。英米枢軸。カナダとの関係、南米諸国との関係。「パナマ運河」「太平洋」 こうかいてゆくと、構想の一端がすぐ見える。この構想は、北欧諸国、南欧諸国のEUからの離反を誘っているのです。 この構想は、新興諸国を誘い込もうとしているのです。とくに中国、インド、ロシア、ブラジルなど。 この構想では、ロシアと日本は、非常に重要な位置を占めています。この構想のもと、英国としてはロシアを誘い込み、日ロ平和条約をさせてロシアに4島を日本に返還させ、その見返りに日本が千島列島の経済開発と北極海沿岸の経済開発に資本と技術を提供させるという外交をする必要があります。昔大英帝国はロシアの南下を防ぐために日英同盟を結びましたが、今度は日ロ協商をなりたたせることが英国の国益となります。 ロシアを抱き込むためには、ロシアにセバストポーリを与える必要がありますね。 世界構想としてこれに近いアイデアをもっているのが、中国で、中国のいわゆる海のシルクロード構想ですよ。すでにマラッカに中国は新たな運河を掘ろうとしています。ある意味で中国は、英国とウマが合うでしょう。 きりがないのでこの辺でやめておきますが、英国は世界の各地でGO BETWEENとしてふるまいながら、その仲介の手柄によって一個の勢力として存在しようというので、大きく言えば、米国とEUの中間に、中国と向かい合って立つ仲介勢力となろうというのです。 こういう国には、国是、というものが必要で、その国是によって多くの国々の共感を得ようというのです。 改めて英国の新国是を考えてみますが、まあいずれ英国人がこんなようなことを考えるでしょうよ。 (ひとつわかりやすい手がかりがある。英国の中国観は、日本の中国観とは一味違いますね。研究してみる気はありませんか。それから、こういう話はいま先を急いでいるので、拙速でやれることをやっておいたほうがいいのです。) まあ、私の欧州との付き合いは長いので、別の話はまた別の時にします。