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2025-07-16 06:43:00
実をいうと、私はいま、ハンナ・アーレントという欧州から米国に帰化した政治思想家のことを書いた本、『全体主義の起源』、『人間の条件』などを手がかりにハンナ女史の思想を理解しようとしていた。動機は、いまトランプ氏が米国に建てた覇権は、「全体主義」に通じるものではないのかという強い疑いを持ったからである。このハンナ女史の議論は難解を極めるもので、何度も同じところを読み返したりしているのだが、現在の日本の政治状況は、ハンナ女史が一番いいたいことにピッタリ符合する。わたしは、ハンナ女史のいいたいことをこうまとめよう。/人の世で、基本的に重要なことは、国政である。国政の主権者とされる国民の一人一人が、政治を考えることができる最低限の生活のゆとりを、経済社会の多くの利害得失を二の次にして、確保されてあるべきである。/どうだろう、わかりやすくすれば、日本人の各人が、しかるべき新聞を購読し、この新聞の少なくとも政治欄をゆっくり読み、家族や知友と政治を語る、というぐらいの生活の自由とゆとりを持つことが、大事ではないか。(たとえとして申し上げたので、強制する気は毛頭ない。それにいま話題の「外国人」のほとんどは、残念ながら日本の新聞を読む力がないものね。)/この「経済社会の多くの利害得失を二の次にして」というところが、現代にあって、特に重要なところだ。そしてハンナ女史の議論が「難解」とされるのも、この論点に関わるからである。