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2022-11-14 18:51:00
リチャード・クー『デフレとバランスシート不況の経済学』徳間書店、2003年。私は長年、経済ニュースで、一向に真意がわからない語句がある。それは、構造改革、内需、バブル、バブル不況、規制緩和、規制撤廃。それじゃ過去30年間ほど、日本経済に関してあなたは何もわからなかったろうと言われれば、「しかり、さっぱりわからなかった」というしかない。これらの言葉は経済を説明しているはずだ。しかしこれは明らかに通常言われる経済学の言葉ではない。これらの言葉が、どうして、どのように、日本経済の説明になるというのか。自分がわからぬ以上、私はこういう言葉を、私自身で日本経済の説明に使ったことは一回もない。/クー氏の「バランスシート不況」という言葉を以前初めて目にしたとき、一瞬「なんだこれは」と思った。いま日本経済全体を問題ににしようとしているとき、「バランスシート不況」という言葉は、これはあきらかにミクロの経済主体を問題にしている言葉ではないか。ミクロの経済主体とは、この場合、個々の法人企業のことであろう。個々の法人企業のバランスシートが「壊れている」ということだろう。恐慌による資産の(当然に、資本の本体であろう)価格暴落が生じ、法人企業は、その資産の購入に用いた負債を、資産価格暴落にも関わらず相変わらず暴落以前の価額で返済を続けなければならぬ・高率の利払いを続けなければならぬ。こういう恐慌後長引く不況期の事態を「バランスシート不況」と呼んでいるのであろう。このように法人企業のバランスシート中の資本価値が「棄損」されている事態を「バランスシート不況」と呼ぶのだろう。ここまではすぐわかる。「それなら、当該企業は、速く損切りして、出直せばいいではないか」。それが出来ない企業は市場から退出すればいいではないか。数分でこう読んでしまうと、これ以上話題に拘泥する気を失った。それが二十数年前、初めて「バランスシート不況」という言葉に出会った感想である。/しかしそれから幾星霜。日本経済は相変わらず得体の知れない状況を続けている。今回、丁寧に読もうという気を起こし、今回ようやく二十年前の蒙から覚めた。これは正論だった。(続く)