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2022-11-11 10:02:00
読書の感想。河北新報社『河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙 それでも新聞をつくり続けた』文芸春秋、2011年。 2011年に起こった東日本大震災に対処して、仙台市に本社がある東北地元の新聞社・河北新報社がどのように存続し、地元に寄り添った新聞作りを行ったのかという真摯な記録。震災当時は不本意ながら目を背ける心理が働いていた本を改めていま読む。読後に不思議と残る爽快感は、自然災害を相手に人間同士の扶助と共感の努力がもたらすもので、これが人間同士の醜いエゴのぶつかり合いである戦争・戦乱であれば、どっちが勝った戦争であれ後日に爽やかさなど残りようもなかろう。本書は、当時の地域的な記述を読みながら、そこに生きた人々の心理や感情が、よくうかがい知ることができる。(当時名取市に生きた方々の心細い心理、当時仙台市にあって、福島の放射能の影響をひじょうに恐れていた弟の心理、よくわかる。救援物資を送ったら、自分はこれをとりに自転車で向かうのだが、空中に放射能の危険が高いのだぞと叱られた。)いま私たちはコロナの流行(もう三年になる)と戦っているが、生きる条件を捜しつつ、家族を地域を社会を、とにかく存続させようとしている。いまこの当時の河北新報の記録を読むにつけても、自然災害であるコロナ禍に対して、人間同士の助け合いで切り抜けられないはずはないという思いを強くする。