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この長澤規矩也『三省堂漢和辞典』に学ぶ点は無数というぐらいありますが、いまとくに私がありがたかった点、三点に絞ります。第一点。「親字の引き方」6--7ページに示される、「親字の見つけ方調べ方の練習」です。こういう具合に例示してもらえると、たいへんにわかりやすい。第二点。「漢和辞典の引きにくい理由のもう一つは、漢字の画数がよくわからいということです。」(3ページ)として、説明しておられる「漢字の画数の数え方のありよう」(5--6ページ)です。第三点。漢和辞典で初学者が、親字(漢字)をその「見たままの」部首(端的に、偏旁冠脚)で引こうと志した場合、なんとも形容しがたい困難に出会うだろうとしているわけですが、この困難を分解し、わかるような説明にまとめるのは大変なことで、それをこの辞典が4--5頁で説明している点です。この問題は、教育漢字と当用漢字のような初等教育レベルで漢和辞典を使うという教育的に基本的な場面では長澤氏流で問題ないと思います。しかし国民文化的には、このレベルでは満足しえないでしょう。『康煕字典』の部首を本来とする部首索引のありように理由があるというレベルがありはしませんか。それにしても初学者が多くは『康煕字典』の部首索引を本来とする部首索引のありようで、すでに大概挫折してしまった後の「国民的文化」を顕彰するのも、おかしなものです。
いま漢和辞典は売れないそうです。漢和辞典を編集し刊行する今後の日本の企画はかなり絶望的だと言われています。いま古本屋では、堂々の漢和辞典が、1冊100円から200円で売られています。300ないし350円出せば、かなり多くの種類の漢和辞典が容易に手に入ります。「千円以内」となれば、ほぼ問題なく買えるのではないか。どうぞ日本の同胞のみなさん。いま1冊か2冊、漢和辞典を入手し、漢字の問題を考えてくださるようお誘いします。ひょっとすると近い将来、漢和辞典がまったく書店に現れなくなるかもしれませんよ。もしそういうことになつたら、あなたの子弟に手元の虎の子の漢和辞典をを与えて、あなた自ら漢和辞典の引き方を説明したらどうだろう。まずその前に、あなた自身もいま、漢和辞典の引き方を回顧してみる。そうお勧めしたい。