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2022-05-24 09:33:00

5月24日付道新朝刊を目にして、「なるほど、新聞というものは、こういう議論ができるのか」と感心した。その6頁に「時評論壇 ウクライナ危機 ロシアを追い込んではならぬ」(中島岳志氏、東京工大教授の文章)が載っている。ここで「歴史現実主義」とでも呼ぶ「立場」が示されている。米国の立場、ロシアの立場、そういう国家的立場にすっかり立つというのではなく、現に流れている歴史を私心なく観察するところから得られる知見を重視しようという考えであろう。さもなければ力と力の対決をとことん進めてゆくという方向にひた走るだけで、外交的解決が働く余地は極小になろうと考えるのである。そもそも米国の立場というのが、純粋無垢などというものではなく、9.11テロ以降に米国が展開した「リベラル覇権主義」の中にあって、例の「イラク戦争からイラク民主化政策」と同根の「米国の価値観を世界に押し売りする」体のものではないかという。そもそもこういう「リベラル覇権主義」批判を行ったのが、日本人の外交有識者、東郷和彦氏で、東郷氏は米国のシカゴ大学教授ミアシャイマー氏という識者を引用しつつこの議論を行っていたと。*要するに、いまわれわれは「リベラル覇権主義」の過剰にもブレーキをかけなければならないと、中島氏は主張している。*ご承知のように、この議論は、同紙1頁に「日米、中国抑止を強化 米『台湾有事に軍事関与』」という大ニュースがのっていることとの関連で、ここに掲載されている。道新今日の紙面は、「歴史現実主義」の下で「米主導の新経済圏発足 IPEF 日韓印など13か国参加」(同紙1頁)という緊急ニュースを扱おうとしている。*今日の道新の社説(同紙7頁)「日米首脳会談 平和と安定へ外交努力を」は、「米国に乗せられすぎるな」と警告している。せっかく首相出身地の広島で、核廃絶の気持ちを新たにする会合を開くのに、平和のための核抑止力重視の意見や、ウクライナの様子をみて台湾有事対応強化の意見やは、ほどほどにし、この米国を盟主とするIPEFなる協定が結局米国のための重要物資確保を主話題にしていることに、「歴史現実主義」的まなざしを捨てるなということだろう。