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2022-05-22 09:11:00

この厳しい札幌の冬季間。実は当館にもいくつかの小事故があった。これはそのひとつの話。某室天井から水漏れあり。気が付いた時には、某室床が相当に水で濡れていた。早速室内の物を別室に移動したが、この部屋にはかなり本があったので、何冊かの本がひどく水濡れしていた。(事故対応は、水道業者が天井をはがし、そこにあった上水管に措置を施して、水漏れを止めた。)さてこの水濡れした数冊の本のうち、立派な1冊の英書が、びしょびしょ。これを窓際の陽の当たる箇所において自然に乾くに任せた。ERIC HOBSBAWM, THE AGE OF CAPITAL. エリック ホブスボーム、「資本の時代 1848-1875」。5月に入ってようやく本が乾いたが、カビが生えて、たいへんな状態になっている。40年以上前に書かれた英国の歴史家の著書だが、題名に惹かれてこの高価な本を買っていた・よりによつてこの高価な本が水害にあうとは。*私はさいきん電子辞書にある「世界の1000著」のうち、ロビンソンクルーソーの漂流記を選んで少しずつ読んでいた。ときどき辞書を引く程度で何とはなく読み進める。先入観とは違って、自然の中で生存に追われている記述が延々と続き、だいぶ読んだがまだ一向に人影が現れない。*さてホブスボームがカビで失われる前に目を通そうと取り上げた。よめば何となく読み進める。ただしロビンソンクルーソーよりはずっとスローペースだ。冒頭を読みながら驚いた。なんと歴史書とはたいへんなものだ。英国19世紀の30年未満の一時期を扱うのが、「これがどういう時代なのか」を自信をもって語るというだけのことに、難渋せざるを得ないとは。ただホブスボームをしてはっきり言えそうなことは、英国の近代史が市民革命、産業革命という二つの革命に先導されて開幕するが、1850年ごろ(すなわち1848年)の「革命的時期」を境にして、突然「市民革命による先導」は低調になり、「産業革命に先導される進歩」が好調になるという「かたちんば」の様相となる。そしてやがてくる「1873年」は、米国史でいう1929年大恐慌に匹敵する「恐慌」の開始であると。(歴史上、英国の大不況期といわれる。)まー英国で(英国だけではなく多くの西欧諸国で)「市民革命による先導」が低調になった裏腹に、労働者の運動と社会主義の運動が以後の「世界史」になってゆくわけだが。(これはまさに次の時代、20世紀の脈絡だろう。)*つまり、どうして20世紀がくるのかという初期症状がこの1848-1875年に潜在しているということになりそうだ。そのタイトルが「資本」なのか、「資本家」ではないのか。*私のいうこともとりとめない。