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2018-03-29 22:58:00
2018年3月29日。札幌。★以前触れた福永武彦『風のかたみ』中の「影」を読みながら。★この今昔物語仕掛けの純文学を、とやかく講釈する学才は私にはない。私はただ、楽しみながら読み進むだけ。この作品は旧仮名を使っているわけではないが、文章に使われている言葉が「古風」である。国語辞典を引いても出てこない。今日は意を決して、あえて古語辞典を引いてみた。三省堂『全訳読解古語辞典』第3版、2007年を使う。★そうしたらなんとかわかるようになった。「影」について、私が拾って辞典を引いたものだけ書き記す。★別業(別荘)、家司けいし(家令)、牛車ぎっしや(牛が引く車)、半蔀車はじとみぐるま(女性がのる牛車。車内から外が覗けるようになっている)下屋しものや(文中では召使などが住む板屋)、ささめき声(静かな内緒話の声)、二昔ふたむかし(ひと昔が10年前だとすると、ふた昔は20年前だろう。)、いみじげな音色(いみじとはたいへん多義の言葉だが、ここでは素晴らしいこと)、うら寂しい(うらとは、心ということ。こころ寂しい)、漏れ聞いた(秘密に聞いた、または、うわさで聞いた、ここでは前者)、天竺震旦(インドと中国)、その場を去りもあえず(敢へずとは、耐えられない、果たすことができない)☆ここで私は、昔の唱歌の一節を思い出したよ。「今はとボートに移れる中佐、飛び来る弾丸避けもあへず、旅順港外恨みぞ深し、軍神広瀬とその名残せど。」★なんのためにこんな読書をするかって?こういう仕方で古文の文章に少しずつ親しもうと思うんだ。