インフォメーション

2017-05-28 17:16:00
2030年東北自治区とは、今から4半世紀も以前に半村良氏が書いたSFの題名である。半村 良『2030年東北自治区』新潮社、1992年。ブックオフで、108円で入手。アマゾンからでも入手する気なら、入手可能でしょう。あるいは古本屋で突然遭遇するかもしれない。★四半世紀前に書かれたSF。しかしこの本に描かれている主題は、現在にこそふさわしい。その意味で、ひじょうに先見性のあるSFだった。★作品は、日本が外国人移民の大量流入に際して、日本の全体は移民を受け入れて共存しようとしているのに、日本の一部の人々は移民との共存を嫌い、自分たちだけの「特権領域」を日本国内に作り上げたというのである。その特権領域がこの本の題名に言う「東北自治区」(この本の中ではたいてい、フアウンデーション、と呼んでいる)である。その特区とは、東北5県、青森、岩手、秋田、山形、宮城にまたがるという設定。★この本の話の進行は、移民と共存する日本全体がうまくゆきそうな様子を示しているのに、フアウンデーションはその狭量なありようからいずれ自滅の道をたどるのだろうという。★さて、いま世界では、中近東という狭い国際関係からどうしようもなくあふれ出た「中東難民」が先進国世界へ向かっており、それに対して米国と欧州が概して「移民拒絶」という強硬な態度をとっている。なかんずく最大の問題点は、米国トランプ政権が、「自国中心主義」を公然と取っていることだ。★テロテロというが、テロという「直接の原因」ばかりを問題にして、なにがテロをもたらしているのかという根源はほとんど話題にもならない。ついさっき閉幕したG7も、米国に自由貿易を勧めることもできず、環境問題でたしなめることもできない。世界の将来展望はどこにあるのか。★4半世紀前に書かれたSFを「正夢」にしているとは、実に情けない。★今の世の言動は、このファウンデーション内の指導者たちの言動とそっくりだ。一服の清涼剤。一読を勧める。