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2017-03-18 20:48:00
前回「一冊50円」で店じまいの古書店から買った貴重な1冊としていたのが、この小林秀雄『本居宣長』昭和53年(1978年)、新潮社、である。小林にこの著作があることは、以前から知っていた。この堂々の大著は、607頁という浩瀚ということもあるが、読み進むと恐ろしく「読み進みにくい」本で、入手以来かなり日数がたつが、一度に数頁もはとても「進みにくい」本である。私だって人並みの読書力はあるつもりだが、読む都度考えさせられるところが多くて、早くは読めない。★本居宣長は、「国学者」の一人といわれる。「国学」とは、『広辞苑』第4版によると、「古事記・日本書紀・万葉集などの古典の、主として文献学的研究に基づいて、特に儒教・仏教渡来以前におけるわが国固有の文化および精神を明らかにしようとする学問」であると、その第3項に書いている。★「わが国固有の文化および精神」を明らかにするという課題が日本人にとって重要であることはいうまでもない。この小林著を手にして痛感するのは、「わが国固有の文化および精神」の内実が何なのか、その内実を探る仕方がどういうものなのか、ということ自体が、こういうことを考えるという課題自体のありようが、単純に天下ってくるのではなくて、重大な思索の対象になるということが、提示されているということである。この本居宣長という人物の偉さは、この課題を堂々と真正面から日本人に問うている点ではなかろうか。