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2016-09-08 10:29:00
『徒然草』第74段 「蟻のごとくに集まりて、東西に急ぎ、南北に走る。」続けて言う。「高きあり、賤しきあり。老いたるあり、若きあり。行く所あり、帰る家あり。夕べに寝ねて、朝に起く。」兼好は、生の営みをこのように街頭に活写します。「いとなむところ何事ぞや。」(なんのためにこのような生の営みをしているのだろうか。)「生をむさぼり、利を求めて止む時なし。」(長生きすることのみ求め、営利を求めるばかりであろうが。) ★以上が前段です。人間の生の営みを街頭に活写する冒頭の文章が、印象深いですね。それだけに、人間が何を思ってそうするのかという結びが、苦々しいのです。★ つぎに後段です。人はこのような生の営みのうちに老いと死を待ちながら、「名利におぼれて」老いと死の近いことをいまは顧慮していない人もいるし、「常住ならんことを思ひて」(世間も自分の生活もいつまでもかわらなければよいと思いながら)現実にはそうはならないので、悲しむ愚かな人もいる。この愚かな人を「変化の理を知らぬ人」としているのが、この第74段の「要約」となっている。「変化の理」を知らぬ人。★ この「変化の理」というのは、『平家物語』の冒頭の有名な言葉、「諸行無常」の理ですね。