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2016-09-04 10:37:00
小西甚一『古文の読解』旺文社、昭和51年。これは私が入手した本で、いまでは体裁を変えて発行されているだろう。なにしろ半世紀もの間「古文の読解」の素晴らしい手引きと目されていた本である。★ その目次は次の通り。1..むかしのくらし 2.むかしの感じかた 3.むかしの作品 4.むかしの言いかた 5.解釈のテクニック 6.試験のときは。その内容は87回の短い話題(各回2-3ページぐらい)から成り、その各回の話題の中に、さりげなく古文の例文がちりばめられている。古文の例文には現代文訳と、いくつかの語句説明が付く。★ 「はしがき」はこういうことを言っている。1. この本は古文が不得手な人のために書かれた 2. いまは日本復興のために、日本国民は実用的・実際的な知識を優先するしかなかろう。しかしそれだけでは将来の日本のために困る。将来の日本人はしっかりした教養を身につけていてもらいたい。(古文はそのような日本人の教養の重要な一部であろう) 3. この本自体は古文の試験の時になんとか及第点を取る程度のことしか書いていない。4.「諸君がまだ下っ端である間は古文など必要がないかもしれない。しかし諸君が偉くなった時には古文の教養がきっと諸君の背景になる。」この本はその基礎固めにすぎない。★ 「プロローグ」では、この本を読む際にぜひ座右に備えてもらいたいものを挙げている。1. 古語辞典 2.簡単な国文学史年表と文法の基礎事項をまとめたもの。3.学校で使っている古文の教科書。そして、「この『古文の読解』をゆっくりお読みなさい」といっている。私はこの指示に従おうと思う。★昔は、大学進学の具体的志望がはっきりしない高校生が、教師によって、理科系なら大半工学部志望に誘導された。そういう時代にこのささやかな本は書かれたのだ。古文の面目躍如たりではないか。