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2016-06-08 15:07:00

安倍氏がいわれのない世界経済の危機観をもっていると、いま日本中のほとんどあらゆる立場の人々から叩かれている。

私はこの前この欄に、「いま世界経済に危機観をもっていなければ、そのことのほうがよほどおかしい」という文を書いた。

今日はあえて言いたくもないのだが、「決定打」を書こう。どうして現在のような極端な世界経済の構図を、危機とは思わないのか。

リーマンショック以後、欧米の中央銀行は、貨幣発行量の量的大緩和・いわばはらまき・を行ってきた。それはおのずと超低金利政策を伴っていた。その結果欧米通貨の対外価値は低く維持された。

そうしなかった日本のような国と比べれば、その間欧米諸国の経済成長率は高く維持され、欧米にはデフレは起こらなかった。

このような欧米の金融政策は、おのずと国債の大量発行政策とつながるであろう。

さて、2012年に安倍内閣が成立したときに、安倍氏の「おともだち」である黒田氏が日本銀行総裁になった。そして黒田氏の下で、日本銀行はここに述べた欧米型金融政策をとる決断をした。

ただ、自然にそうなったのではない。浜田宏一氏その他の幾名かの経済学者がこの「クロダミクス」を慫慂したのである。

浜田宏一氏『アメリカは日本経済の復活を知っている』講談社、2013年には、浜田氏がどのような理屈で安倍氏に「クロダミクス」を勧めたのかということが、詳しいデータ入りでくっきりと示されている。

今思えば、「アベノミクス」の「成功」の90パーセント方は、この浜田氏のような意見を安倍氏が採用したということにあるだけである。

その意味では、「アベノミクス」は手品でも幻でもない。

しかし、リーマンショック以後じつに8年もたつのに、欧米日の中央銀行がこのはなはだしい、緊急的金融政策を、続けているとはどういうことか。そのこと自体がたいへんな危機ではないのか。

早い話、この緊急的政策からの「出口」を、欧日の中央銀行は、どのようにまじめにかんがえているのですか。ぜひヒントなりとお示しくださいな。

米国の中央銀行である連邦準備銀行は、ご存知のとおり、何とか通常の金利政策に復帰しようと躍起になっている。それがうまく、問題なく、復帰できるでしょうかね。欧日はどの程度それに「協力」するんですかね。そのようなシナリオを損なう意外な突発事項が世界経済に起こる可能性は、ぜんぜんありえないのですかね。

安倍氏がどのような根拠で世界経済の危機観を直感しているのかは、私は知りません。しかし私は、世界経済の危機の懸念は濃厚にあると思いますよ。

日本の金融政策を急速に欧米に合わせるだけなら、この世界マクロ経済的な判断からすれば、日本の財政規律はローカル問題でしょうね。しかし日本の貨幣量増加政策は、日本自体のローカルな政策としては「デフレ退治」という触れ込みを強調して行われました。それに国債大増発を伴っていることは、ローカルに財政規律を取り扱うときに微妙な綾を生みます。要するに、世界マクロ経済的判断と日本国内のローカルな判断がどう「接合」するのかという問題です。

つまりは、世界経済の危機という認識が、どのようにローカル経済政策の認識につながるのかは、安倍首相の政治責任ということでしょう。この「接合」の仕方に一義的答えはないでしょうよ。

なお諸氏は、いま世界経済の危機はない、と言い張るのですか。