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2016-05-12 09:44:00

今日の北海道新聞(5月12日号)をみて驚いた。道新記者がトルトネフ副首相とモスクワで単独会見した記事が載っている。(1ページと4ページ)

副首相は5月12日から来日するのだが、それに先立ってのインタビューである。「クリール諸島(北方領土と千島列島)の開発を着実に進める考えを示し、それを日本と共同で実現することは可能だ。第1に日本を招待するといい、住宅インフラの整備や栽培漁業などを挙げて日本側に協力を求める考えを示している」という。私はこの場所に前回「千島列島日ロ共同主権」という夢を述べたので、意外の符合に驚いた。

たいへん正直なところ、「サハリン州(サハリンおよび千島列島)を日本が租借する」、「千島列島に日ロ共同主権を樹立する」ぐらいのことがなければ、日本が国力を傾けて「北方開発」にあたり、国内でも経済政策の重点を北海道に移し、日本の第2首都を札幌におく、というようなことにはなるまい。かりに北方領土4島が帰ってきたとしても、この4島の経済効果がどれほどのものか、過大評価はできないだろう。北方4島だけの見返りでは、日ロ友好もほんの一時的なものではなかろうか。

これまで半世紀の日ロマラソン交渉で、日本の民心はすっかりしらけている。あるいは過去の一時期に北方領土返還があれば、それがスムースな日ロ友好につながって相当の効果を生むきっかけになったかもしれない。しかしそれにしても、いまの安倍首相は日ロの領土問題を前向きに解決する政治的意欲をもった日本では最後の政治家ではないかという思いを私はもっている。(そしてご同様、ロシアのプーチン首相は、決断力をもって問題を解決するロシア最後の政治家かもしれない。)願わくば両国でこの問題にかかわる任にある人々が、それぞれのトップの決断を助けるよう努力されたらよいとおもう。

トルトネフ氏の談話で2番目に伝えられているのは、「サハリン州から北海道に電力を供給するエネルギー・ブリッジ構想の実現に向けて、日本側が協力すること」である。

たいへん正直なところ、北海道の産業が現在の程度であれば、北海道の電力は余っている。泊原子力発電所の稼動すら、不必要なほどだ。現状では北電は、北海道で余った電力は本州に送って、東北電力なり東京電力なりに売るしかない。しかしもしシベリア開発のようなこれまで期待していなかったような新しい需要に関連して北海道の産業が活気付く場合には、その限りではあるまい。ここでもたんに目の前の話ではなく、真に長期的な課題の発展が前提であろう。そしてそれにしても、北海道電力がもっている極寒冷地での発電および送電技術力は、シベリア開発にとってとうていほかでは期待できそうもないものであろう。(仮にの話で、もしロシアが北海道でどれでもいいから3つ上げるといえば、1にホクレン、2に北海道電力、3に道南の製紙工場(王子製紙、日本製紙)を希望するであろう。)

シベリア開発にもっとも必要なエネルギーは電力とその供給網である。その電力発電をサハリン自体で行い、シベリアにも要所に発電所を整備し、シベリアに送電網を張り巡らせるのがシベリア開発長期的観点のありようで、その出発点としては、「サハリンの余剰ガスの大口消費者を北海道に求める」のは、ちと矮小ではないか。

 ぜんたいに矮小さが目立つのは、現在のロシアの欲の小ささかもしれない。それなら2島返還、2島は「さしあたり」共同主権、ぐらいの想定しかできないのだろうか。千島列島共同開発ね、サハリンのLpの大口消費ね。それでも過去半世紀余の不毛の交渉よりは、はるかに画期的だろう。あとはハバロフスクの都市生活がしやすいような野菜の栽培・供給政策ぐらいのものか。