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過日ゆうちょ銀行の窓口にいたら、このような窓口風景があった。
やや大きな金額を引き出そうとしている老人に対して、窓口は、10項目近い「振込み詐欺防止アンケート」用紙を提示しながら、そのアンケート項目のいちいちについて「そうでない」という確認を求めている。
最近流行の「おれおれ詐欺」の具体的な防止策にゆうちょ銀行も協力しているという一幕であった。
しかし経済社会が普通に運用されていればまずは絶対にありえないはずの「ゼロ金利」(最近はマイナス金利も)のもとで、経済社会が普通に運用されている場合に庶民が貯金に期待してよい利息がほとんどありえなくなっている状態を他方において考えれば、おどろくべき不釣合いがここに存在する。かりに2パーセントなり3パーセントなりの金利が常識であれば、国民経済的には振り込み詐欺で失われる被害額の何十倍になるのか見当もつかない巨額のプレミアムが庶民から奪われていることになる。
立花 隆『滅びゆく国家』日経BP、2006年の329ページに、立花はこう書いている。
「何年にもわたるゼロ金利政策によって、貯蓄者(国民全体)から、ゼロ金利でなければ得られたであろう所得が奪われ、その分、銀行に所得移転が行なわれてしまうという恐るべき国民全体からの富の収奪と、それによる銀行救済が行なわれてきた。」
この引用文は直接にはバブル期の経営失敗からの銀行救済を庶民からの超低利の預金に転化したことを指している。それにしても根本的意味に変わりはない。
ある財界人は、利子がゼロ金利になることは、資本主義の機能停止である、とすら言っている。
こういうとんでもないことが可能になる前提が、1970年代の金ドル不換以来の変動相場制、通貨の完全な管理通貨化、先進国で常態になってきた膨大な国債の発行体制であることは明らかである。膨大な国債発行によって強行的に作り出された巨額の国家信用を背景に超低金利政策が行なわれ、その中で前記立花の引用文が指摘するような大衆収奪が当然のように進行しているわけである。
これはいわば大仕掛けのおれおれ詐欺ではないのか。