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2016年2月23日、火曜日、午後8時、札幌の天候。今日は曇り。ときどき雪でした。せいぜい積もって1‐2センチでしょう。昨夜の積雪はなし。風なし。気温は少し寒く感じました。この程度の天候がこれから1週間ほど続くようですね。
さてマイナス金利をめぐる経済学の展開という議論の続き。前回(第1回)では、経済主体として個人事業主を想定しました。今回は企業を想定しますよ。
現には企業が、経済社会の中心単位なのだから、個人事業主ではなくて企業を中心に考えるのが現実的であるということになりましょう。
しかし多くの人々の心の中では、やはり個人が経済社会の中心単位なのであり、現実に百年前には個人事業家が中心単位だったのです。
個人が中心単位だった経済社会から企業が中心単位の経済社会に、経済社会が移行してきたのです。だから、昔は個人単位だったかもしれないが、今は企業単位なのであろうと。
今の経済社会では、生産活動(あるいは商業活動かもしれませんが)を行っているのは基本的には企業(株式会社)であり、その企業は外部から資本の投資を受け(いわゆる出資を受け)、出資を受けた資本をもとに企業は生産活動を行なうのです。すなわち企業は、生産財を購入し、労働者を雇用して、生産活動を行なう。生産財と労働は、「生産要素」であって、企業が前以て持っているものではありません。これが企業の行なう「投資」の内容なのです。
個人事業主と企業とで、資本の意味内容、投資の意味内容がずいぶん違ってきていることが、容易に理解できましょう。
企業は個人事業主の場合とは違って、投資に際して決して「現在の消費を節欲している」のではありません。そもそも企業はヒトではありませんから、消費をしません。企業が生産財を購入するのは生産のためであって(生産的消費といいます)、消費のためではありません。企業の投資はその内容からいえば「生産要素」になっているわけです。
企業が他の企業に「貸す」こともありえます。これは他の企業の生産活動を助けることになりましょう。企業(株式会社)はマネーを外部から出資してもらって成立します(自己資本)が、企業が資本として生産要素を買うマネーは、外部から「借りる」こともあります(他人資本という)。このように企業間でマネーを貸したり借りたりする際に「利子」が付きます。この「利子」はとうぜんにプラスの利子です。
ところで、ちょっと待った。第1回の個人事業主中心の経済社会と第2回の企業中心の経済社会へと、議論を淡々と運んできたが、この運びにはだいぶ飛躍がある。この移行は一朝一夕で進んだのではない。
この移行の分岐点に横たわる重大な問いは、いったいいつから、いかなる理由で、私的な営利事業に株式会社制度を適用することが許されるようになったのかと言う点です。(19世紀には私的な営利事業に株式会社制度を用いることは社会的にはありえないこととされていました。)次回はこの論点に進んでゆきますから、また読んでくださいね。
これは中央銀行制度の社会的な評価にかかわる重要な論点なのです。いま話題が日本銀行のマイナス金利政策の採用というきっかけで起こってきたので、たいへんに珍しくも、この論点が浮上する好機となったのです。なにしろ19世紀的株式会社制度の第1級の歴史的好例がイングランド銀行(イギリスの中央銀行)でしたので。わが日本銀行も株式会社日本銀行なのですよ。