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2025-11-25 07:01:00
トッド氏著(2) 「日本の読者へ」つづき。/ウクライナ戦争を論評している部分。/トッド氏は、本書執筆中の「世界の戦争危機」が「国民国家の世界的な政治・経済対立」としては、「米ロ対立と米中対立である」と観察し、この二極で、「欧米世界(日本も含む)」が「非欧米世界」と対立している、と読み解く。しかし「国民国家の社会人類学的対比」としては、この米ロ、米中という世界的対立の社会人類学的ありようとしては、これは「英米仏の核家族型の国民国家の姿」と「その他の世界の直系家族型=日独、および共同体家族型=75%の世界、の国民国家の姿」との対抗であるという。/世界(グローバル)の経済的対立の姿は、世界の貿易構造として、誰の目にも明らかである。英米世界(消費国)が消費物資を非英米世界(生産国)に仰ぎ、英米世界が年々膨大な貿易赤字構造になっている姿である。/社会人類学的には、近代的諸国家は現在、人口が停滞ないしは減少の極端な様相を示しており(それを移民でなんとかカバーしようとしている)、戦争を他の国民国家にしかけて国勢を伸ばすという目論見は元来がありえないものとなっている。/それなのに、戦争が切迫したものであるという危機感を英米世界がもつのは、核家族型特有の政治・経済イデオロギーを、それ以外の家族型の(つまり直系家族と共同体家族)の政治・経済に強制しようとして、それがうまく強制できなくて行き詰まっているという、英米世界の無理解に起因するとしている。/そもそもこのグローバルな政治・経済そのものが、相互依存の強い体制になっていることが誰の目にも明らかなのに、これを「戦争への危機」と受け取っている英米世界のありようは、不合理極まりないと著者は考える。/著者がよく例に挙げるのは、英米世界で当然のように推進される「女権尊重」という仕方は、これを家族型が違う諸国民国家に「当然の絶対的倫理として」ごり押しに強制するようなありようが、現実の社会的ありようとして「少しは反省されてもよさそうなものだ」と、さてみなさんどうおもうかな。この辺で仰天して驚かれるのなら、もうこのあとよまなくていいでしょう。/ところで「米ロ戦争危機」の具体化としてバイデン時代に「ウクライナ戦争」が始まり、現在も戦われている。ただトランプ氏の第2次政権は、なんか対ロ関係が奇妙な紆余になっているね。いまあたかもロシアと共同して米国はウクライナ和平を図るかのような雲行きだ。そしてウクライナ戦争は欧州がやっている戦争だから、欧州自身の戦力と財力でやるがいいというようにトランプ氏は言動している。/私は蛇足を加えすぎたかもしれない。ただ、トランプ米国政権は、従来の英米世界の常識がもう維持できないと見極めて現れているということは容易に見て取れる。トランプ氏のリベラリズム否定の言動が「単純には否定しがたい」ものなのは明瞭だろう。/「経済制裁」という欧米型戦略に著者が言及して、これは「平和的戦争手段」どころか、第一次大戦期に欧米が発明した「敵国をせん滅する戦略」であるとし、ところが現在のウクライナ戦争では、欧米の対ロ経済制裁は、当然にロシアの対欧米経済制裁を伴い、結局は両者とも消耗戦になっており、いまや「どちらの側が堪えられないか」というありさまになっているという。図星だな。「欧米側が絶対に強い」と言い切れる状況ではなかろう。もともと欧米とロシアの間の強いエネルギー相互依存関係が存在するのだから。欧米から言って殲滅戦のつもりが、客観的にはそうはなれまいという観測だ。共食いないしは共倒れということだな。