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2025-11-23 06:15:00
これからトッド氏著『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』上巻「アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか」について、何度かに分けて感想文を書きますが、その第1回は、上巻冒頭の「日本の読者へ---政治学、経済学ではわからない現代世界」(1-19頁)です。「トッド氏著(1)」と、タイトルに通し番号を付けておきます。/この「日本の読者へ」では、この著作が著者の研究生活の集大成であること、自分の学説が日本では非常に受けがいいからあえてこの「集大成」の日本訳を出す気になったことを述べ、日本にも速水融(とおる)という「歴史人口学の父」がいて、その人は日本の直系家族という家族型が、鎌倉時代から明治維新に至る長い時間をかけて徐々に定着していったことを明らかにしていること、著者は従来欧州ではドイツの直系型家族に非常な興味を持っていたが、東洋の日本の同様に直系型家族に親しく興味を燃やしつつ、いま「日本から世界をみる」という新鮮な視覚を経験することは大変に有意義である、としています。(著者はフランスの人なのです。)/この著書は2017年に出版されましたが、2016年はイギリスのEU脱退、年末に米国に第1次トランプ政権登場、という波乱の年でした。それにしても現在の時点(本書日本訳出版2022年)までには、ウクライナ戦争の開始という激動があります。この「日本の読者へ」では、この2017-2022年の間に起こったウクライナ戦争についての論評を、特に書きこんでおきたいとしています。/以上を要するに、ウクライナ戦争についての著者の論評が、この「日本の読者へ」執筆の主目的だと、わかります。/もう一度、稿を続けて、「ウクライナ戦争についての論評」を書きましょう。/このトッド氏という人の議論の仕方、文章の書き方は、国民国家の家族型から出てくる「そのネーションの特徴」を基盤に置きながら、そのネーションの政治と経済という表層の観察を、「それらの表層をより深い次元で規定している教育、宗教、家族システム等」の動きに注目する「人類学的アプローチ」という構造をとっているのですが、この議論の構えが大型か小型かはその場合によりますが、著者によって常にとられているのが、明らかです。ありていに言って、家族型の議論はそう難しいものではありません。このウクライナ戦争論評の個所では、とくに「社会的下意識の」そして「社会的無意識の」分析が加わる点に注意して眺めたいと思いますよ。つまり、この際あえて、トッド氏の議論の「癖」を把握することです。/なに結構トランプ氏の関税政策の論評なども含めて、第2次トランプ政権の観察に必要な議論も、本書中に十分に表れています。