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2025-10-28 06:24:00
ウクライナ戦争を考えるとき、この戦争の構図「西欧世界対ロシア」について、トッド氏は社会人類学的知見に立って、まず偏見なく両者の「構造」を眺めることが最初に必要だろうと考える。そして我々「西欧側」の人間は「ロシアの現にあるがままの構造」をまったく度外視しているようだとする。/ロシア国民の背景とするロシアの家族型について、たとえばフランス(平等主義的性質の核家族)と比較して、これはユーラシァ中央に広範な「共同体家族」だとして、つぎのようにいう。「ロシアの共同体家族は、普遍主義的な『平等』のシークエンスを発動する。『息子たちは平等である』に由来して、『人々は平等である』および『諸国民は平等である』」 /フランスが『子供たちは平等である』に由来して、『人類は平等である』という普遍主義を発揮し、フランス革命を世界に広げようとしたように、ロシアは共産主義体制を普遍的なものとして国際社会に広めようとした。この全体主義的共産主義体制が解消された後、ロシアの独裁的プーチン帝国は、「諸国民は当然平等であるはずだ」というより平和主義的ビジョンに変化した。そこで「多極的世界の構想を繰り広げ、その多極的世界の中でロシアは諸国民の平等性と自立性を擁護せねばならない」(ロシアの主張)という「西欧の国際的普遍性の主張」に対する「ロシアの普遍的主張」として、現実には非西欧世界(中国、インド、アラブ諸国等)に支持されている、とトッド氏は国際政治の現実をみる。これはロシアが国際的に孤立して破れているという図とは、だいぶ違うのではなかろうか。人口で言って、西欧世界25%、非西欧世界75%である。/確かにユーラシア中心部の共同体家族型は、国民性として『集団主義的・専制的』である。今核家族的な英米仏の「個人主義」が極端に絶対的に唱えられるのに対して、この「集団主義・専制主義」が対極としてくっきりと目立ってきた次第だ。その代表がロシアである。それにしてもこの非西欧の75%がまったく眼中にない西欧的世界観が、おそろしく非現実的なのは、否めないであろう。