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2025-10-27 06:08:00
『トッド人類史入門』第2章「ウクライナ戦争と西洋の没落」。第2回の話題「ウクライナ戦争での対立図」。//トッド氏はこの話題で、現在の日本人の多くが信じている「ウクライナ人という『正義の善』にロシア人という『悪の権化』が侵略戦争を行っている」という『イメージ』とは『一変』した『イメージ』を述べている。どうぞ前回に引き続く今回、さらに次回、をお読みの上、お考えあれ。そもそもあなたの目は、米英とEU諸国という『一丸となった正義の味方』が『ウクライナを侵略しているロシアという悪の権化』を『退治している』というイメージではないだろうか。そうすると同じ『一枚岩の正義の味方たち』が、現在行われているイスラエルのパレスチナ側ガザ侵略に対してはなにやら得体のしれない行動を示すのはどうしてだろう。米国の大統領がロシアのプーチン氏を尊重するような態度を示したり、ウクライナ大統領を叱責したり、イスラエル寄りの態度を示したりするのはどういうわけだう。欧州の英、仏、独が、言動が一致しないのはなぜだろう。こうしてみると単純にウクライナ応援ということで『国論が一致している』のは、極言すればいまでは日本だけではないか。もっとも最近は日本国内でウクライナ問題を口にすることすら、おややけには稀のようだが。でもウクライナ戦争そのものは容赦なく続いているのである。/ただ、『日本の国論はウクライナ戦争について一致している』が、現実の国際政治の上では、日本は現在三種類の、『相互には矛盾する政策』を『日本国としては当然』としてとっているのである。ダブル・スタンダードならぬトリプル・スタンダードだ。『まあ国際政治についてはいつもの苦渋の選択だから』と日本人はこれは異とはしない。だが外国はこれを咎めてくるだろう。その時はまた、『しかるべくあいさつする』というわけだ。日本の国論というのはたいがいこういう具合なので、日本人はさして気にしない。/佐藤 優氏は、高坂正堯氏の『国際関係三層の態度』を援用して、日本がウクライナ戦争に対して、三層の態度をとっているとする。第一層は「価値の体系」で、公式にはウクライナ擁護という政治的立場を明瞭にしている。しかし第二層の「利益の体系」では「日本の国益上やむにやまれぬ措置」として、「日本はG7の中で唯一ロシアの航空機に対して自国の領空を解放している。またシベリアの上空を経由してヨーロッパに行くことに利益を見出している。旅客機は飛んでいないが貨物機を飛ばせている。」「ロシア極東の石油と天然ガス採掘プロジェクトであるサハリン1とサハリン2の権益を日本は維持している。」「ロシアに入漁料を支払ってサケ・マスを獲る仕組みも維持されている。」第三層は「力の体系・すなわち軍事力の体系」で、日本に平和憲法がある以上、ウクライナ軍事支援はできないと。端的には「防衛装備移転三原則が紛争当事国への武器輸出を禁止しているので、ウクライナに防弾チョッキやヘルメット以外の兵器は送っていない。」(52-54頁)/文を改める。