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2025-10-22 06:17:00
私たちがトッド氏入門として考える『トッド人類学入門』文芸春秋社、2025年は、とくに日本人にとってわかりやすい仕方で説かれていて、直接にはトッド氏最近著で、トッド理論の決定版と氏自身がしている『我々はどこから来て、今どこにいるのか』上下、文芸春秋、の手引書となっている。そしてこの『トッド人類学入門』自体が、まるで日本の女性問題を主テーマにしているような書き方になっている。この本で読者が日本の女性問題を把握したと思うときに、トッド氏入門が果たせただろうというわけだ。今日は、この『トッド人類学入門』のはじめに述べられている、日本人が人類学的にはそのタイプのもとにあるという「直系家族」の説明を、とくに引用させていただいて、問題提起の正確を期そう。「直系家族は、父系制への発展の第一段階に相当します。長男を特別視して家督を譲っていく縦型のシステムです。/前世代の獲得物を次世代に効率よく継承できるのが、このシステムの強みです。知識や技術や資産の伝承に長けていて、今日の日本、韓国、ドイツ、北欧のように、総じて教育水準が高いという特徴があります。/歴史的には、メソポタミア、エジプト、中国という当時の先進社会で、知的・物理的資本の蓄積が始まると同時に、長子相続という継承ルールが確立しました。ちなみに社会において老人が権力を持ち始めたのも、資本の蓄積が可能になったからです。/女性の地位については、このシステムでは、核家族より低下しますが、大きく低下するわけではありません。特権化されるのは長男だけで、他の息子たちは娘と同じように処遇されるからです。共同体家族のように、男女がはっきり区別されるわけではないのです。/直系家族社会は、『知識や技術や資本の蓄積』を容易にし、『加速の原則』という強みをもっていますが、他方で、過剰に完璧になると硬直化するという弱みがあります。『キャッチアップ』は得意でも『創造的破壊』は不得手なのです。『老人支配』を招きやすいのも弱点です。」『トッド人類史入門』(27-28頁)   *「資産が家族的に伝承される」ほどに「資産」が蓄積されるには、農耕時代に入ってかなりの年数、何百年から何千年という年数、があったろうということを、付記しておきます。特別に重要な論点ですから。