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2025-10-21 10:50:00
『トッド氏人類学入門』「Ⅰ 日本から家族が消滅する日」によって、「核家族」をまず説明する。これは現代では主として英米仏に当てはまるとしている。英国の場合がもっとも「純粋」。「親子関係が自由で、兄弟間の平等に無関心」(19頁)とあれば、個人主義的で、自由主義的特徴が強いのである。イギリス型を絶対的核家族と称している。フランスの場合は、子供が結婚後独立した世帯をもつのはイギリスと同様だが、相続が子供たちの間で男女の差別なく平等であると、「平等」という性質が強い。それで「平等主義的核家族」(19頁)と称している。「一組の夫婦が中心となる核家族の出現によって個人主義という家族的特性を帯びる」のは、決して近代固有の論理ではなく、実は太古の時代にそうであった(20頁)と言っている。少々長いが、「原始、自由であった」様子を引用しよう。(23頁)
「ホモ・サピエンスが核家族を形成して狩猟採集民として暮らしていた頃の男女関係は、かなり自由でした。若干男性の方が支配的で、男性は狩猟、女性は採集(つまり農業)という性的分業もありましたが、男女間に相互補完的な平等が存在していたのです。当時の人類にとって最大の課題は、厳しい自然環境のなかでの生き残りで、夫と妻の連帯なしには生き延びることができなかったのです。/ そして原初の『核家族』は、プラグマティックな『柔軟性』も備えていました。必要に応じて、若い夫婦が両親と一時的に同居したり、独りになった老人を彼らの子供たちが引き取ったり、ただし食糧が不足する場合にはその老人たちを切り捨てたり、同じ理由で子殺しも行われました。一夫一婦制を基本としながら、事情により、一夫多妻、一妻多夫、離婚、同性愛も許容されていました。」