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2025-10-13 09:10:00
人類史を「家族構造」の流れで見ると、人類史は、今から9千年前のメソポタミア流域で開始された「核家族」形態から、その5千年後の「直系家族」形態、そして有史時代以降のより複雑な「共同体家族」形態の展開、という具合に経過してきた、とする。「メソポタミアでの人類文化の開始」というのは、人類の農耕と定住の始まりで、人類の生活が多少なりとも次世代に残す知的・物的資産が社会に存在するようになるのが、「直系家族」形態への移行と重なるのであると。「メソポタミア」以前は、人類は長く遊牧流浪の生活をしていたわけで、「核家族」形態は遊牧中に発生し、農業時代に入っても数千年は続いたろうと。ちなみに現世人類の発生は、私は昔、5万年前と習ったが、今はどう見られているか。人類の種はアフリカで発生し、それが地球上に広がっていったと。トッド氏による世界史的な家族形態史は、上述のように、「核家族」ー「直系家族」ー複雑な「共同体家族形態」とたどられているが、これが「メソポタミア」や「黄河流域」やのような太古の文明中心地から出発して世界中に、移動する長い歴史を経ながら移動していったのである。だから「核家族」や「直系家族」のような「太古の家族形態」も「四大文明からみればはるかな周辺部」で、現に存続しているというのだ。トッド氏は英国の家族形態を「核家族」、ドイツと日本の家族形態を「直系家族」としている。ロシア、中国、インドはこの二者とは明瞭に対比できる「ある種の共同体家族」なのだという。トッド氏の示している社会人類学は、人類の共同体史を、私などが以前はそう思っていた「発展」を、恐るべきことにすっかり逆に示しているのである。核家族、直系家族という家族形態は、人類史では、もっとも太古に近い、言ってみればより原始的な形態だとしているのだ。*そうすると、歴史が切り開いた「近代欧州」というのは、私などがこれまでそうと信じて疑わなかったように、人類普遍の新しいありようを開いたものということを、疑ってみざるを得ないのである。*そういうわけで、この本の序文にあった佐藤 優氏の言、このトッド氏に似た議論として日本の柄谷行人氏の共同体論を挙げているが、似ているのはほんのうわべだけで、内容はまったく正反対だ。柄谷氏は折りさえあれば「遊牧民の自由」を回顧し、この遊牧民的自由さで共同体を再建するような想念を話すが、トッド氏の議論では「核家族」形態がこの遊牧民的自由さを属性として含むものとしている。太古的自由さ、ね。